やっぱり桜庭一樹の描く〈少女〉は絶品「荒野」

 借りて読んだ……。いや、だって、ミギーさんの絵のついてない「荒野の恋」なんて心情的に認められないし、装丁のセンスはないし、帯は「直木賞受賞後第1作」とか言い切るし!
 でも、やっぱり面白いんだなあ。悔しいけれど愉しい。桜庭一樹氏の描く少女ものは絶対的に素晴らしいのだ。
 第一部・第二部は既読なんだけど、いい感じに記憶が薄れていて、新鮮な気持ちで読めた。加筆修正箇所なんてさっぱり!*1
 で、初読の第三部。もう少し氏の作家としての変化が現れるかなー、と思いきや、余り変わらない雰囲気に、嬉しいような物足りないような。特に荒野が成長をしたものの、女にはなりきらず〈少女〉のまま終わったのは意外だった。そしてタイトルから「恋」が落ちた事に得心した。そう、この作品は恋だけでない、荒野という一人の〈少女〉そのものを描く物語に変質していたのだ。
 冒頭色々言ったが、なんだかんだいっても、この物語が結末にまで辿り着けて良かったと心の底から思う。世の中完結できぬまま消えてしまう物語のなんと多い事か。そして初め、ファミ通文庫でこの話を読めた私はとても幸運だった。やっぱり荒野はミギー絵だよ、うん!

荒野

荒野

*1:いや、この辺はそうかな、ってのはあったけど。