秀才、天才に克つ!「クジラのソラ04」

 終わりよければ全て良し。そんな風に思える、見事な最終巻。
 巻数を重ねる毎にパラダイムシフトしていって、何処に行っちゃうんだーと不安と期待がないまぜのシリーズであったが、最後はぐるりと廻って最初のスポ根テーマに戻ってきた感じ。周りに壮大なSF設定を置きながら、あくまで少女たちの友情物語に戻したのは、英断であり正解であったと思う。
 とにかく雫が秀才としてあがき、あがきまくって、周囲の天才たちと渡り合ってしまう展開が熱い。そして吹っ切れた後の、罵詈雑言は胸がすくようだった(笑)。
 改めて感じたけど、この人、会話だけで話を進めるのが巧いなあ。会話文だけなのに、誰の発言で、どんな事をしているのか分かるんだものなあ。雫と智香の互いへの深い信頼を、たった三行の会話で表しちゃったり。
 早送りにも感じられる怒濤の連戦展開だったけど、その後にまったりとしたエピローグで締めて、絶妙の緩急。綺麗なラストだった。
 この人の次回作には期待。

クジラのソラ〈04〉 (富士見ファンタジア文庫)

クジラのソラ〈04〉 (富士見ファンタジア文庫)