インシテミル
サイン会整理券ゲットならず。なので、普通に買ってきた。
本作は今までの米澤穂信作品から「青春」を引いて、「殺人ゲーム」を足してみた感じ。つまり「殺人ゲームミステリ」。*1そんな訳で、米澤作品に「青春」を期待している私のような読者には、ちょっと違和感があるかも。
〈実験〉という名の元に構築されたクローズド・サークル。〈ルールブック〉という殺人を促すシステム。この極めて人工的な舞台装置は面白かったが、でもやっぱりクローズド・サークルなら「嵐の山荘」のようにあくまで偶然を装って用意される舞台の方が好みだなあ。
登場人物も普段の米澤作品と違い、キャラクタ性を極力排除している様子。そのせいで登場人物が覚えられず困ってしまった…。動機なども明確に語らないので、みなどうにも駒めいている。
本格ミステリな殺人ゲームに「淫してみる」作品としては、それは狙い通りなんだろうけども。でも、ミステリに於ける殺人は、もっと『崇高』であるべきだと思うのですよ。死が余りにも記号的に描かれていて、死の臭いがしないので、最後まで実は生きてましたオチを勘ぐっていたくらい。
という訳で、面白いけど好みではない作品だった。
あと。この内容で、西島大介の表紙はないよ! ある意味、本作最大のミスディレクション!
追記。
英語タイトルのTHE INCITE MILL。もちろんインシテミルのもじりだが、発音はインサイトミル。inciteが動詞なので正確な翻訳は困難だが、強いて訳すなら扇動装置だろうか。舞台装置そのものを指す言葉だろう。
*1:暴論。ネタです、念のため。