エロスとタナトスのディストピア「七本腕のジェシカ」

 私は吸血鬼ものが好きだ。しかし最近あまり読んでない。なぜなら…吸血鬼ものが好きすぎて、閾値が高くなり、ぬるい吸血鬼ものだと愉しめないからだ。しかも私は比較的原理主義者で、半端な設定の吸血鬼ものを見ると燃やしたくなるのである。
 そんな訳で、本書が出た当初、吸血鬼ものだよー、と複数の人に薦められて買ったのだが、愉しめなかったら厭だなあ、と思いそのまま積読の山の下に沈めてしまった。しかし現在、積読崩し月間(別名・ラノサイ杯シフト)のため読んだ。
 結論から言えば、すべては杞憂であった。
 内容は吸血鬼ものというより、遠未来のディストピアSF。しかし吸血鬼ものの肝たるエロスとタナトスの程よいブレンドが、良い味付けとなっている。ラノべでは珍しい、キャラよりも世界観で魅せるタイプの小説で、読み手を選ぶだろうと思われる。
 最後は思いっきり引いているので、続きが気になるー…って、今月出るのか。我ながら良いタイミングで読んだな!

七本腕のジェシカ (MF文庫J)

七本腕のジェシカ (MF文庫J)