ずっとお城で暮らしてる
同著者の「たたり」を読んで以来気になっていたものの、絶版のため入手難で読めなかったのだが。この度、桜庭一樹さんのお陰で復刊!
この作品、読んでいて、とにかく不安になる。
なにしろ何があったのか、よく分からない。物語は少女の視点で描かれているのだが、それが事実なのかどうか揺らいでいて、分からない。現実なのか、それとも超常的な何かが起きているのか、いくつもの真相を考えながら読むのだが分からない。その推理のどれもが正解のようで、間違っているようで…しかし読み了えた今でも正確に何があったのか分からないのだ。
個人的には、紹介文にある「超自然的要素を排し、少女の視線から人間心理に潜む邪悪を描いた傑作」という部分には首肯できない。そういう解釈も成り立つというだけだ。「超自然的要素」から読み解くことも可能であり、そんなさまざまな解釈がありうる混沌とした小説なのである。
そんなよく分からない小説が面白いのか、と言われれば、よく分からないけど面白い、としか答えようがない。
万人に薦められるものではないが、独特の読書体験を求めるのならば、一度手に取って欲しい怪作である。