ずっとお城で暮らしてる

 同著者の「たたり」を読んで以来気になっていたものの、絶版のため入手難で読めなかったのだが。この度、桜庭一樹さんのお陰で復刊!
 この作品、読んでいて、とにかく不安になる。
 なにしろ何があったのか、よく分からない。物語は少女の視点で描かれているのだが、それが事実なのかどうか揺らいでいて、分からない。現実なのか、それとも超常的な何かが起きているのか、いくつもの真相を考えながら読むのだが分からない。その推理のどれもが正解のようで、間違っているようで…しかし読み了えた今でも正確に何があったのか分からないのだ。
 個人的には、紹介文にある「超自然的要素を排し、少女の視線から人間心理に潜む邪悪を描いた傑作」という部分には首肯できない。そういう解釈も成り立つというだけだ。「超自然的要素」から読み解くことも可能であり、そんなさまざまな解釈がありうる混沌とした小説なのである。
 そんなよく分からない小説が面白いのか、と言われれば、よく分からないけど面白い、としか答えようがない。
 万人に薦められるものではないが、独特の読書体験を求めるのならば、一度手に取って欲しい怪作である。

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ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫 F シ 5-2)
シャーリイ・ジャクスン 市田
東京創元社 2007-08
評価

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by G-Tools , 2007/09/07