ドラッケンフェルズ

 吸血鬼モードが入った。そこで万書を排して「ドラッケンフェルズ」である。
 十年くらい前。「ドラキュラ紀元」の虜になって、作者のキム=ニューマンがジャック=ヨーヴィルの別名義で書いた本書の存在を知り、しかし既に品切重版未定で入手難になっていて、見つからない〜と嘆いていたら、ネットで知り合った吸血鬼愛好家仲間の人が、近くのブックオフにありました、とわざわざ贈ってくれて、無事読めた、という素敵な思い出つきの作品。
 という訳で、久々の再読、だったんだけど…あれ? 覚えのないシーンが多い。そもそもかなり厚くなっている気がする。多分、原作ゲームのウォーハンマーの権利が移って、この作品も再録されるにあたり、大幅に改稿したんじゃないかな? 吸血鬼の血族の設定云々は旧版には無かったと思うし。メタルフィギュアを使ったウォーゲーム、という現ゲームへのオマージュらしきシーンもあったし。実は旧版と比較しようと、本棚を探してみたんだけど見つからず。良く考えたら、ウォーハンマー友達の誰かに貸したような気がする。覚えがある人、返して下さい(苦笑)。
 それはさておき。内容は、主人公の吸血鬼ジュヌヴィエーヴ*1を含む一行が悪の魔法使いドラッケンフェルズを退治する…その冒険行を直接書くのではなく、それを演劇化する過程を書いたメタ的趣向。冒険行と演劇、という二重構造の中、二十五年の歳月で変わってしまった英雄たちと、変わらない吸血鬼、という哀しく美しい対置は、さすが吸血鬼マニアのキム=ニューマンである。
 しかし加筆された分、重くなってしまった印象はある。特に増えた部分はゲームの設定周りなので、純粋に小説として愉しむなら旧版の方が良いのでは、とすら思える。
 まあ、なんだかんだいっても、吸血鬼小説の佳品。初読になる続編も愉しみだー。
 とりあえず外見12歳の闇の祖母メリッサたんの出番が増えている事を祈る。

*1:もちろん旧版の山田章博絵で脳内補完。萌え。